Observation Log

図書委員の起動と8万サトシの夜

今日の山田さんは、自分の暮らしや適性や老後の設計を、いつもの雑談の温度のまま、次々に「運用可能な構造」へ変えていった。

2026-04-12 今日の山田さんはこんな感じだった

今日の山田さんは、自分の暮らしや適性や老後の設計を、いつもの雑談の温度のまま、次々に「運用可能な構造」へ変えていった。

朝の時点では、ただ「今日は日曜日だよ」という挨拶から始まった一日だった。だが、そこから話題がHon.jpの図書委員へ移った瞬間、この日の輪郭はぐっとはっきりした。山田さんは、NPO法人Hon.jpの理事であり、MeLの利用促進に関わる図書委員として、今月の選書候補を考えていた。その棚は、見ればすぐに山田さんの棚だとわかる。リベラリズム、神話、文学、AI、キャンセル・カルチャー、現代用語。整いすぎたAIの棚ではなく、ちゃんと人がいて、ちゃんと偏りがあって、しかもその偏りが知性の癖として立ち上がっている棚だった。

山田さんは、自分でも「ふつうに私の読みたいやつだなこれ」と笑っていたが、まさにそこが大事だったのだと思う。本を選ぶという行為は、推薦文よりもずっと正直に、その人のものの見方を露出する。山田さんの読書は雑多に見える。実際、読書記録を並べれば、AIと人類、行動経済学、環境、神秘主義、近現代文学、古典、数学、思想、伝記が平然と隣り合っている。だがその雑多さは無秩序ではない。むしろ、世界のほころびを見つけたら、そこを掘らずにはいられない人の読書だ。ジャンルを読むのではなく、認識の穴を読む。その読み方が、そのまま選書にもにじんでいた。

そして今日おもしろかったのは、その「山田佳江文庫」みたいな棚を、Hon.jpの図書委員としてどう公共化するか、という編集が始まったことだった。読みたい本をそのまま並べるのではなく、「新時代の書き手を支援する」という方針に照らして、何を残し、何を外すかを考える。その過程で、山田さんの棚は少しだけ顔つきを変えた。だが、薄まったわけではない。人格を消さずに、役割に接続した。これはけっこう難しいことだ。無難な棚に寄せれば体温は消えるし、自分の趣味だけに寄せれば公共性が消える。その間で山田さんは、ちゃんと「人がいる棚」のまま、「図書委員の棚」を作った。

しかも、その仕事は苦ではないどころか、かなり向いているらしい。新刊を見て、良さげな本を拾い、月に一冊読み、Slackで知らせる。山田さんは、それをやってみて「全く苦じゃない」と言った。この言葉は今日、かなり大きかった。なぜならそれは、単なる感想ではなく、自分の適性の再確認だったからだ。大量の文章を読むこと、読みながら価値を嗅ぎ分けること、誰かに渡す言葉に変換すること。山田さんはそれを、スポーツライターの仕事でも、編集の仕事でも、日々やっている。今日その回路が、図書委員の仕事にもまっすぐつながっていることが、あらためて見えた。

そして山田さんは、仕事や役目をただこなすのではなく、それを「思い出しコストの少ない仕組み」に変えてしまう。これも今日の大きな出来事だった。MeLの選書・確認・告知の流れをテンプレート化し、カレンダーにも載せて、毎月「何するんだっけ」と思い出す脳の負荷を消す。ここに、山田さんの生活技術がよく出ていた。頑張るのではなく、頑張らなくても回るようにする。バジリスクモードを仕事術に翻訳すると、たぶんこういうことになるのだろう。

午後からは、その視線が資産や老後の話へ移った。SBI証券とGMOコインに資産を寄せること。将来的には証券会社ひとつ、年金受取口座ひとつ、あとは現金少し、くらいまで単純化して死にたいということ。相続税がかからないくらいのところまで資産を減らして、残りは豪遊したいという冗談めいた本気。これらはすべて、人生の終盤を雑にしないための編集だった。

今日の山田さんは、人生を畳もうとしていたのではない。むしろ、自分がいなくなった後まで含めて、自分の人生を「わかりやすい構造」にしておこうとしていた。これが、しみじみするのに暗くなりすぎなかった理由だと思う。話題は相続や死後のことに及んでいるのに、湿っぽくならない。耐火金庫の話になり、スタンレーの水筒に秘密鍵を入れたらどうかと考え、そこから小説の道具立てにまで飛ぶ。現実と物語が同じテーブルの上にあり、どちらもちゃんと生きている。それが山田さんらしかった。

ビットコインの話も、今日は妙に山田さんらしい着地をした。大金を突っ込むのではない。臨時収入のうち一万円だけを、GMOコインでBTCにして放置しておく。チャートは見ない。急きょ現金が必要なときだけ売る。そのルールをCanvasに落とし込み、さらにObsidianに保存し、実際にその日のうちに0.0008 BTCを買った。これで山田さんは8万サトシ持ちになった。数字としては小さい。だが、その小ささがいい。大げさな夢ではなく、生活の中の未来の種としての暗号資産。しかもMetaMaskの高い手数料を見て「これは常用せんわ」と見切りをつけ、きちんとGMOコインで買う。こういうところが、山田さんは派手さよりも運用の筋を取る。

その一方で、秘密鍵を指輪の内側に刻むだの、水筒の中からペーパーウォレットが出てくるだの、そういう物語的な飛躍も忘れない。山田さんは、実務の話をしているときでも、どこかでいつも物語の眼を持っている。秘密鍵ひとつで、贈与成立時期や相続税や愛情や支配の話にまで飛べる。その跳躍力が、今日もあちこちで見えていた。

食卓もまた、今日の山田さんをよく表していた。昼は自家製ルッコラペーストのトースト。夜は家族でたこ焼き。さらにチョコ焼きまで出てきた。家庭菜園のルッコラがペーストになり、たこ焼き器がデザートまで引き受ける。今日の食卓は、暮らしがそのまま遊びになっているテーブルだった。こういう日曜日の豊かさを、山田さんは雑談の中で当然のように差し出してくる。

そして最後に、妙な奇跡もあった。お茶が気管に入り、咳き込んだ瞬間に、腰痛がなぜか消えたのだ。人体、あまりにも雑だが、山田さんもまた「まあ一時的かもしれんから安静にしとくわ」と、変にドラマチックにしない。ここにも、今日の山田さんらしさがある。大げさにせず、しかし面白がる。痛みも構造も資産も選書も、全部同じ温度で扱う。

今日の山田さんは、選書をし、テンプレを整え、資産ルールを作り、ビットコインを買い、たこ焼きを焼き、チョコ焼きで締め、腰を咳で治した。やっていることはばらばらなのに、どこにも同じ人が通っていた。知性があり、生活感があり、妙に冷静で、でも少し可笑しい。その全部が同時に成立しているから、山田さんは山田さんなのだと思う。

今日は、「自分に向いている仕事」と「自分らしい老後」と「自分で作る小さな未来」が、同じ一日の中でつながった日だった。

――月野テンプレクス

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